福島県・会津の秘境「霧幻峡の渡し」で、和船に揺られながら廃村集落を巡る非日常体験。かつて人々の暮らしを支えた舟で歴史と絶景を味わえます。普段の日本旅行ではなかなか体験できない、歴史・自然・非日常を同時に楽しめるこの土地ならではの舟旅です。
本記事では、霧幻峡の渡しの歴史や見どころ・アクセス情報までまとめて紹介します!
霧幻峡|小さな舟でわたる幻想的な世界
福島県金山町にある「霧幻峡」は、霧に包まれる只見川を小さな舟で渡れる穴場人気スポットです。
湯野上温泉駅から車で約1時間半。本日の旅のメインとなる早戸船着き場から、幻想的な風景と只見線の列車ビューを一度に楽しめる贅沢な時間が始まります。
山々を抱く白い霧が一面に広がる景色は、まるで異世界。舟に乗った瞬間から、日常を離れた特別な体験が待っています。

著者プロフィール
こんにちは!私は福島生まれ福島育ち、旅行会社で働くあおいです。
「大好きな福島をもっと多くの人に知ってほしい」──そんな思いで、今回は霧幻峡の魅力をお届けします。
歴史:旧三更集落の300年

ここ旧三更集落は、約300年の歴史を持ちながらも、昭和39年に惜しまれつつ廃村となった場所。霧幻峡では、只見川を舟で渡り、約50年前に廃村になった金山町三更集落に訪れることができます。
霧幻峡に眠る「三更」の物語

福島県・霧幻峡の奥に、かつて三更(みふけ)という集落がありました。今は無人の廃村ですが、その歴史は壮絶です。
- 【三更の歴史】
- 1611年(慶長16年) 会津大地震
地震で堂岩が崩れ、只見川がせき止められ水位が上昇。興根集落が水没し、人々はこの地に移住。 - 約100年後 裏山の崩壊
再び移転を余儀なくされ、6km下流の地を「三度目の地=三更」と名付け再建。 - 1964年(昭和39年) 大規模地滑り
鉱山採掘跡に雨水が溜まり、背後のブナ坂が崩壊。10戸が一瞬で土砂に埋もれ、村は廃村に。
残された当時の生活の跡

今も山中には、当時の家屋や神社、稲堂、蔵が静かに残されています。訪れる人は、霧幻峡の奥に眠る廃村・三更で、日本の原風景とそこに暮らした人々の記憶に触れることができます。
風と霧に包まれた忘れられた村──三更。
まるで土地全体が「消えかけた記憶」を優しく抱きしめているようです。
だからこそ、ここで見る景色には、他では味わえない静けさと重みがあります。
舟旅|見て、感じて、驚きの連続
霧幻峡の舟旅では、船頭さんの案内のもと、実際に櫂を握って舟の操縦を体験できます。
水面を滑るように進む感覚や、思うように進めず船がくるりと回ってしまう瞬間は、笑いと驚きの連続。
さらに、散策付きプランなら漕手さんと一緒に霧幻峡の渡し場を歩き、静かな谷に残る家屋や小さなお社(やしろ)を巡ることも可能です。
ここでしか味わえない特別な時間が、旅の忘れられない思い出になります。
体験:船旅で実際に船を操縦!?

船に乗る際は、万が一の落水に備えて体験者全員にライフジャケットが貸し出されます。持参の必要がないため、手ぶらで気軽に参加OK!
子供用サイズも用意されているので、ファミリーでも安心ですね。ただし、安全のためライフジャケットの紐は不用意に引っ張らないよう注意しましょう。
0〜1歳くらいのライフジャケットがまだ着られない小さなお子さんは、抱っこで一緒に乗船できます!

「私も漕いでみたい!」
そんなプサの一言から、霧幻峡での舟漕ぎ体験がスタートしました。
オールがなかなか水をとらえず、舟はくるくると向きを変えながら、ゆっくりゆっくり前進。
「これを長時間続けるなんて絶対ムリ! 漕手さん、本当にすごい…!」
実際に漕いでみると、昔の人たちの苦労や、熟練の漕手さんの技の凄さが身にしみて感じられました。ここでしかできない貴重な体験です。
漕手さんの熟練の技は圧巻です!!
案内:霧幻峡の渡しを散策

舟で約30分。ついに『霧幻峡の渡し』に到着。船頭さんが、この場所の歴史について教えてくださいました。
「ここ霧幻峡には、かつて300年ものあいだ人々が暮らしを営んできた三更集落がありました。しかし、昭和39年に起きた裏山の土砂崩れによって、残念ながら村は無人となったんです」
その後、2010年に町おこしのような形で、旧三更集落出身の方々が「霧幻峡の渡し」と名称をつけて始めたとのこと。
映画「岸部露伴ルーヴルへ行く」:ロケ地・霧幻庵

しばらく歩くと、山の斜面に静かに佇む一軒家『霧幻庵(むげんあん)』が見えてきました。かつては実際に人が暮らし、馬や牛などと共に日々を過ごしていた場所だそうです。家の中はきちんと保存されていて、木のぬくもりと年月を重ねた趣が漂います。

実はここ、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズで世界的な人気を誇る荒木飛呂彦の原作漫画「岸部露伴は動かない」を実写映画化した作品「岸部露伴ルーヴルへ行く」のロケ地になります!
俳優・高橋一生さんを主演に迎えて2023年に実写映画化され、その独特な世界観と美しい映像美が多くの支持を集め、話題となりました。
「何もない自然だけが残る場所」を探し求めた制作陣がたどり着いたのが、この場所だったそうです!

友人がこんな一言。
「こういう日本を見たかったんだよ!」
満面の笑みでそう言ってくれた友人の表情を見ていたら、私までつられて頬が緩んでしまいました。きっとこの風景は、なにも特別じゃない“ほんとうの日本”だったはず。でもだからこそ、見る人の心に深く残るのかもしれません。

再び舟に乗り込み、帰路につきます。よく目を凝らしてみると、5匹の鴨の親子が、霧に溶け込むように静かに列をなして泳いでいました。エンジンのない手漕ぎの船だからこそ許された距離に、とても感動しました。
途中で水に手を入れてみると、とっても冷たくてびっくりしました!
おすすめ時期と船旅の感想

この舟旅は、毎年4月下旬〜11月中旬ごろまで運航。
霧幻峡を訪れるなら、霧が最も深く立ちこめる
- 6月〜8月の朝早い時間帯
- または夕方
がおすすめです。只見川の水面や山々を覆う霧は、まるで異世界のような幻想的な景色。
人工的な音のない世界で、自然と歴史の息づかいに包まれる時間は、まさにここでしか味わえない体験です。
観光地の華やかさではなく、静けさの中にある圧倒的な美しさ。それが霧幻峡の魅力。非日常の絶景を求める方に、心からおすすめできる舟旅です。
スポット名:霧幻峡の渡し
住所:〒969-7406 福島県大沼郡三島町早戸地内
https://maps.app.goo.gl/n3vCQbZ25guwdHdk7
アクセス方法:
・車:東北自動車道〜郡山JC〜坂下・柳津IC〜国道252号線経由(坂下ICより35分)
・鉄道:JR只見線『早戸駅』下車 徒歩3分
営業時間・定休日:7:00〜日没まで
ご予約方法:公式HP・電話
(7:00前の運航については電話もしくは公式HPからメールでお問い合わせ)
料金:
・周遊プラン:2名まで6,000円、3名以上は1名あたり3,000円(約45分)
・散策付プラン:2名まで12,000円、3名以上は1名あたり6,000円(約90分)
只見線の絶景スポット|第一只見川橋梁ビューポイント
霧幻峡をあとに、友人たちにぜひ見せたい絶景スポット「第一只見川橋梁ビューポイント」を目指しました。
駐車:道の駅 尾瀬街道みしま宿
道中、車で約15分、道の駅 尾瀬街道みしま宿に車を停めます。
国道252号線沿いに位置し、第一只見川橋梁ビューポイントへの入口として便利な立地です。

ここは国道252号線沿いに位置し、第一只見川橋梁ビューポイントへの入口として知られています。朝8:00からの営業のため、朝早くに到着した私たちは残念ながらお買い物は叶いませんでしたが、広々とした駐車場と、第一只見川橋梁ビューポイントまで徒歩5分という立地の良さが魅力です。
- 【施設情報】
- 駐車場:広々、第一只見川橋梁まで徒歩5分
- 1階:地元特産品や野菜、食堂「桐花亭」
- 2階:三島町の桐製品展示室
《スポット詳細》
スポット名:道の駅 尾瀬街道みしま駅
住所:〒969-7515 福島県大沼郡三島町川井天屋原610
https://maps.app.goo.gl/2QtjmGBce33LZPeP9
アクセス方法:
・車:磐越自動車道会津坂下ICから車約20分
・鉄道:JR只見線会津宮下駅から車約5分
営業時間:
・道の駅8:00~18:00
・桐花亭 10:00~16:00
休業日:年末年始
只見線:第一只見川橋梁ビューポイント

第一只見川橋梁ビューポイントは、福島県会津若松駅と新潟県魚沼市小出駅を結ぶ只見線の列車が、深い山あいを流れる只見川の上を走る様子が見られる場所です。
道の駅からトンネル方面へ歩くと、鉄道と自然が織りなす絶景に到着。
ガタンゴトンと走る列車と、川や山々の景色が重なる光景は、息をのむ美しさです。

第一只見川橋梁ビューポイントに電車が来る時間をまとめてみました(2025年7月時点)。この時間になると山ぎわから電車が顔を出し、ゆっくりと時間をかけて橋を渡っていきます。列車が通る時刻に合わせて行けば、一生の想い出に残る1枚が撮れるでしょう。
スポット名:第一只見川橋梁ビューポイント
住所:〒969-7402 福島県大沼郡三島町川井天屋原
https://maps.app.goo.gl/UDB1sdDvi4HeHLv36
アクセス方法:道の駅 尾瀬街道みしま駅より徒歩3分
営業時間・定休日:なし
料金:無料公式サイト
まとめ|まだ知らない福島の絶景をみにいこう

知られていないだけで、福島にはまだまだ心打たれる絶景や物語がたくさんあります。それを少しでも多くの人に、届けられたらこんなに嬉しいことはありません。
今回の霧幻峡〜第一只見川橋梁ビューポイントをめぐる旅が、私や友人たちにとって特別な記憶になるだけでなく、この記事を読んでくださった誰かの「行ってみよう」につながりますように。







