福島県・会津若松の温泉宿『いろりの宿 芦名』に宿泊してきました!
今回訪れたのは、会津若松市・東山温泉に佇む『いろりの宿 芦名(あしな)』。
昭和の懐かしさが残る味わい深い館内、囲炉裏を囲んでいただく会津の郷土料理、そして何より、心をじんわりと温めてくれる“おもてなし”が魅力のお宿です。
なかでも、私の心に一番強く残ったのは女将さんとの会話でした。
滞在中に聞かせていただいた、旦那さまとの思い出や宿への想い。
女将・和田美千代(わだ・みちよ)さんの言葉の数々が、今も胸に残っています。
今回は、そんな『いろりの宿 芦名』での滞在の様子をたっぷりとご紹介。
さらに、翌日に実際に訪れた「会津のおすすめ観光スポット」もまとめてご紹介します!
これから会津を訪れる方、レトロで心温まる旅をしたい方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
こんにちは!私は福島生まれ福島育ち、旅行会社で働くあおいです。
「大好きな福島をもっと多くの人に知ってほしい」──そんな思いで、今回は東山温泉にある『いろりの宿 芦名』の魅力をお届けします。
14:30 会津若松駅にて友人と合流
会津若松駅からバスで東山温泉へ向かいます。乗車時間は約15分と、アクセスも◎
東京駅から会津若松駅は、新幹線を利用すれば約3時間30分で到着します。時間に余裕がある場合は、「東武特急リバティ+会津鉄道リレー号」 をおすすめします。
途中車窓から美しい渓谷が見える絶景スポットがあり、
旅の移動時間も思い出になるので、初めての方にはぜひ体験してほしいです。
宿は「東山温泉バス停」から徒歩約7分。川沿いの一本道を真っすぐ進むだけなので、迷う心配もありません。
道中は、緑に包まれた小道。宿に着く前から、すでにこの町の空気に癒されます。
15:00 チェックイン
(景観の写真)
「いろりの宿 芦名」に到着です!
私たちが訪れたのは、8月上旬の新緑が綺麗な季節。美しい自然に囲まれており、ジブリ作品に出てきそうなどこか懐かしく幻想的な雰囲気を感じました。
ドアを開けると、芦名の若女将さんが迎えてくださいました。
館内に足を踏み入れて感じたのは、’’ただの和風旅館じゃない’’ということ。
ありきたりな和洋折衷ではなく、一つひとつ丁寧に選ばれた小物や家具たちが並び、
昭和時代にタイムスリップしたかのような気持ちになりました。
葵コメント:隣にいた友人も「まるで映画のセットみたいだ!」と目を輝かせていました。
15:30 日本の’’和室’’を楽しむ|あの有名作家になれる!?
今回宿泊したのは、3階にある「あられ」の間。
Wi-Fiやウォシュレットも完備されており、快適に過ごせます。冬にはこたつが登場するそうで、四季折々に違った楽しみ方ができるのも魅力です。
室内には昭和を感じさせる家具や調度品が並び、和の落ち着いた雰囲気が漂っています。まるでおばあちゃんの家に遊びに来たような、どこか懐かしく安心できる空間でした。
机の上には作家のアトリエを思わせる小物がたくさん並んでいました。気になって調べてみると、なんとここ東山温泉は、’’漫画の神様” 手塚治虫先生と縁があるとのこと!
実際に手塚作品の中には、原瀧の千人風呂から芦名まで続く“地下道”を、キャラクターたちが通る描写があるのだとか、!そんな手塚先生にちなんで作られたのが、このあられの間です。
女将さんのお話によると、
この部屋を企画した当初、「今更遅い」「今の時代じゃない」と周囲からは反対の声が多かったそう。女将さんがこだわりを貫き作ったことで、今ではお客さんに一番人気のお部屋になっているんだとか。
そんな女将さんの想いが詰まったこのお部屋。手塚治虫にちなんだ文化的要素が散りばめられており、歴史や物語に想いを馳せるのが好きな人にとっては、まさに“心の栄養になる部屋”だと思いました。
葵コメント:漫画原稿やペン・絵の具などの他、作家帽やだてメガネといった“なりきりアイテム”もあって、とてもワクワクしました。
(お茶飲む)
手塚治虫気分を味わったあとは、お部屋でお茶を淹れて景色を眺めながらのんびりタイム。
時間を気にすることなく、外の虫の声に耳を澄ましながらゆったり過ごすことで、改めて旅館滞在の良さを実感しました。
観光地を巡る旅もいいけれど、
こんなふうに自然体でのんびり過ごす時間こそが、日々の疲れをそっと癒してくれるのかもしれないですね。
廊下を散策していると、至るところに骨董品やレトロなヴィンテージ雑貨が飾られていて、思わず足を止めました。
「素敵だな」「どうやって見つけたのかな」
そんなことを考えながら、女将さんに思い切って尋ねてみると意外な答えが返ってきました。
女将さんは優しく微笑みながらこう教えてくれました。
「これはね、私が見つけてきたんだよ」
そう話す女将さんの目には、どこか懐かしさと愛おしさが混ざっているようでした。
私はふと、この宿をどんな想いで営んでおられるのかが気になり、そのままお話を伺うことにしました。
16:30 女将さんとお喋り|今は亡き、旦那さんの想い
女将の和田美千代(わだ・みちよ)さんがご主人と出会った当初、まさか「宿を営む」ことになるとは思ってもみなかったそうです。
結婚後ご主人の、’’ここ東山温泉でお宿を開きたい’’という強いご意思のもと、この芦名ができました。会津で美容部員をしていた美千代さんにとって、宿を営むなんて想像もつかないことで、当時は「嫌だなあ」という思いが強かったそうです。
さらに驚くべきは、美千代さんが《女将 兼 社長》という二つの顔を持っているということ。ご主人は、宿の運営にはあまり関わらず、東山温泉地域全体の発展を担う立場で活躍されていたそうです。とはいえ、宿の立ち上げにあたっては、ご主人にも強いこだわりがありました。
「食事は、絶対に囲炉裏(いろり)スタイルで行おう」
「館内に置くものは、なるべく“古き良きもの”を大切にしよう」
昭和初期、周囲の宿が次々と新しい建物へと建て替えを進めていくなか、「芦名」ではあえて“古く古く”していきました。その独自の方針はやがて実を結び、どこか懐かしく温もりのある空間は、多くの人々の心を惹きつける存在となっていきました。
時代の風潮に流されることなく、ご自身の信念を貫いたご主人には、確かな先見の明がありました。そして、その強い想いを信じ、ともに歩まれてきた美千代さんの存在なくして、「芦名」の今は語れません。
お二人が築き上げてきたこの宿には、東山温泉を愛し、地域を盛り上げたいという深い絆と熱意が、今もなお息づいています。
「女将さんが最高だ」──その言葉の裏にあるもの
『いろりの宿 芦名 女将』
と検索すると、驚くほどにたくさんの人のレビューが出てきます。どれを見ても、’’女将さんが最高だ’’とのコメントで溢れているのです。
これほど多くの人に愛され、そして自らも多くの人に愛情を注ぎ続ける女将さん。
美千代さんが“天職”としてこの宿を支えていく姿が、ご主人には見えていたのかもしれません。
女将さんは言います。
「当時はね、あれやれこれやれってうるさくてね。本当に嫌になったもんだよ。でもね、いなくなっちゃうと、ケンカの一つもできないんだから。今はさ、主人が大事にしていたものを、私も大事に繋いでいこうって、そんな気持ちでやっているんだよ。」
お宿を営まれてから、色々な苦労や辛さがあっただろうと思います。それでも女将さんは、ご主人の想いをそっと胸にしまいながら、訪れる人々に変わらない笑顔とまごころを届け続けています。
女将さんとのお話が盛り上がると…
ふと女将さんが満面の笑みで言いました。
「温泉がね、自慢だから。いってらっしゃい。」
まるで家族にかけるような優しくてあたたかな口調。
東山温泉のお湯に浸かるのは初めてだったので、とてもわくわくした気持ちで大浴場に向かいました。
17:30 “鮮度抜群”の源泉かけ流し温泉
芦名自慢の温泉は、
毎分21.6リットル・56.1度という豊富な湯量と高温の源泉を、贅沢に100%かけ流し。
まさに贅沢なお湯です。
温泉街出身の私でも、「源泉かけ流し」にはやっぱりテンションが上がってしまいます。
少し熱めでキリッとした湯加減は、肌を優しく包み込みながら、身体の芯までぽかぽかに温めてくれました。
お風呂の備品は基本的に揃っていますが、シャンプーはリンスインタイプなので、気になる方はお気に入りのものを持参するのがおすすめです!
〜貸切も可能〜
大浴場に入りたいけど人目が気になる時ってありますよね。
なんとここ芦名さんは、お部屋ごとに大浴場を貸し切ることが可能!
20:30~23:10の間から選ぶことができ、チェックイン時に希望の時間帯を聞かれます。
18:30 囲炉裏を囲んで夕ご飯
いろりの宿 芦名の夕食は、囲炉裏を囲んでいただく特別な会席料理。メニューは、その日に仕入れた旬の食材を活かして献立が組み立てられる“おまかせスタイル”です。
女将・和田さんが生まれ育った山里の味わいをベースに、素朴でどこか懐かしい料理が並びます。炭火で焼き上げる川魚や季節の山菜、地元野菜を使った小鉢など、ここでしか味わえない品ばかりです。
今回はその魅力を3つのポイントからご紹介します!
魅力①炭火でじっくり焼き上げられる食材
最初にいただいたのは、囲炉裏でじっくり焼き上げた 岩魚(いわな) と 味噌田楽。
岩魚は、山形県最上町の西塚農場で奥羽山脈の伏流水を使い大切に育てられたもの。
炭火でじっくりと一時間ほどかけて焼き上げることで、骨までやわらかく、身はふっくらと仕上がります。
そんな手間ひまをかけた料理を、芦名のスタッフの方々が囲炉裏から一品ずつ運んでくださる時間は、食事そのものをさらに思い出のひとときに変えてくれます。
魅力②メイン料理は「会津地鶏・会津牛・鴨しゃぶ」からチョイス
いろりの宿 芦名の夕食では、メインの肉料理を 「会津地鶏の水晶板焼き」「会津牛焼きしゃぶ」「会津牛ステーキ」「鴨しゃぶ」 から一品選ぶことができます。仕入れによってはジビエ料理が提供されることもあり、旅の楽しみをさらに広げてくれます。
この日は「会津地鶏の水晶板焼き」をチョイス。会津地鶏は独自の交配、飼育技術により育成されており、そのコク・旨味が人気です。水晶板の上でじっくり焼き上げられた地鶏は程よい弾力があり、噛むほどに旨味が口いっぱいに広がります。炭火によって余計な脂が削ぎ落とされ、表面はこんがり、中はジューシーに仕上がっていました。
さらに芦名の料理は、使われる塩や醤油などの調味料まですべて無添加・無化学成分。地元の自然に育まれた素材の味をそのまま楽しめるのは、女将・和田さんの「本当に身体に良いものだけを提供したい」という強いこだわりの表れです。
魅力③お酒のバリエーションの豊富さ
📷 (フォトACから日本酒の写真挿入)
いろりを囲む夕食に欠かせないのが、会津ならではの地酒や有機ワイン。芦名では「日本酒で乾杯」が定番スタイルです。会津の蔵元から仕入れた日本酒のほか、料理に合わせて選べる有機ワイン、さらにはソフトドリンクまで豊富に揃っています。ワインはセラーから自由に選べるのも嬉しいポイント!
【一度は味わいたい“会津蜂蜜酒”】※枠で囲む
ぜひみなさんに試していただきたいのが、『会津蜂蜜酒 ミード&ワイン』。会津特産「栃の花」の蜂蜜を1ヶ月じっくり醗酵させて造られた蜂蜜酒 Mead(ミード) に、長野県産ナイアガラの白ワインをブレンドした特別な一杯です。
ここでしか出会えない味わいで、女性にも人気のドリンクだそうです。
・ボトル:¥2,000
・グラス:¥800
8:30 朝食も囲炉裏のそばで
夕食だけでなく、朝食も囲炉裏を囲んでいただきます。贅沢な朝食メニューをご紹介します。
朝食は小鉢が並ぶスタイルで、野菜中心のヘルシーな献立。キャベツやニラは程よい塩味が効いていて絶妙な味加減でした。栄養バランスもよく、朝から体に優しい一皿です。
メインはサバの塩焼き。
焼かれている最中、パチパチと身がはじける音が聞こえ、脂がじゅわっと溢れ出す様子を目にした瞬間から、すでにその美味しさが伝わってきました。思わずつばを飲み込んでしまうほど、焼きあがるのが待ち遠しかったです。
実際に食べてみると、炭火でじっくり焼かれたサバは、脂がたっぷりとのったままふっくらと仕上がっており、香ばしさも抜群。口に入れた瞬間、旨みがじんわりと広がりました。
囲炉裏を囲みながら、炭火の香りを感じつついただく朝ごはん。それは、普段の朝食とはまったく違う、「いろりの宿 芦名」ならではの心まで温まる特別な時間でした。
中でも印象に残ったのが、やはりメインのサバの塩焼き。これまで食べてきた中でダントツの美味しさで、この鯖を食べるためだけにまた来たいと思うほど絶品でした。
宿泊ではなく“文化体験”
“囲炉裏でご飯を食べる”という体験は、現代の日本においてもなかなかできることではありません。
日本の古き良き文化をこうして丁寧に残し、滞在の中に溶け込ませている場所があるということに深く感動しました。
この体験を通して、旅館での滞在は単なる「宿泊」ではなく、“文化を体感する”時間でもあるのだと感じる旅になりました。若い世代や海外からの旅行者にも、ぜひこういった日本らしいおもてなしや空間に触れてほしいと思います。
10:00 歴史とロマンが詰まった『会津さざえ堂』へ
チェックアウトを済ませたら、本日の目的地『会津さざえ堂』へ向かいます!
宿からは車で約8分とすぐの距離ですが、徒歩だと30分以上かかるため、今回はタクシーを利用しました。
タクシーを降りると、目の前には静かに佇む飯盛山(いいもりやま)の風景が広がります。
この地は、幕末の戊辰戦争において白虎隊の悲劇が語り継がれる、歴史深い場所でもあります。
(写真)
正式名称は 「円通三匝堂(えんつうさんそうどう)」。
建立は1796年(寛政8年)という、200年以上の歴史を持つ木造建築です。
最大の特徴は、内部が“さざえの貝殻”のようにぐるぐると巻いた二重螺旋構造になっていること。階段がなく、しかも「上りと下りがすれ違わない」一方通行という非常にユニークな造りです。同じ道を戻らずに一周できるため、参拝者も安全にスムーズにお参りができます。
その飯盛山の中腹に建っているのが、今回の目的地 『会津さざえ堂』 です。
(写真)
このユニークな構造は、かのレオナルド・ダ・ヴィンチが設計したと言われるフランス・シャンボール城の階段とも類似しており、そこから着想を得たという説もあるのだとか。
足を踏み入れた瞬間、ギシギシと木のきしむ音。
その音すらも、建物の歴史を感じさせてくれます。
ゆるやかなスロープを螺旋状に上っていくと、まるで時間を巻き戻しているような、不思議な感覚に包まれました。
これが江戸時代に造られたとは信じがたいほどの設計。あらためて、日本の建築技術の高さに驚かされます。
(写真)
天井を見上げると、びっしりと貼られた千社札(せんじゃふだ)に圧倒されました。かつてここを訪れた無数の参拝者たちの存在が、今もこの空間に生き続けているようです。
歩いて体感する、歴史と建築のミステリー
歴史と構造美が融合したこの場所は、建築好きにも歴史ファンにもたまらないスポットです。 上りと下りの通路が完全に分かれた一方通行の構造は、参拝者がすれ違うことなく安全に巡れるよう工夫された、世界でも珍しい建築様式。
歩みを進めるうちに、頭では理解しているはずの構造が不思議に感じられ、ふと足を止めて屋根を見上げたり、隙間から内部をのぞき込んだりしてしまいます。
訪れる人々に「歴史を歩く」という体験の深さを教えてくれる、忘れがたいひとときがここにはありました。
まとめ|会津・東山温泉に滞在して感じたこと
この旅で、私が何よりも心を打たれたのは、女将・和田美千代さんの存在でした。
「本気で接客をしていれば、その気持ちは必ず相手に伝わる」
そう語ってくださった女将さんの言葉には、長年にわたってこの宿を支えてきた重みと、接客に対する誠実な想いがにじんでいました。
「失敗も接客のうち」
このひと言にも、飾らないお人柄と、真っすぐにおもてなしと向き合ってこられた姿勢が感じられます。
そして、そんな女将さんのまごころこそが、この宿のあたたかさをつくり出していると強く感じました。
さらに今回の旅を通して気づいたのは、会津という土地には、まだ知られていない魅力的な宿やスポットが数多く眠っているということ。
「いろりの宿 芦名」のように、文化と真心が息づく宿。
「会津さざえ堂」のように、歴史そのものを体験できるユニークな建築。
そんな“エクストリームな文化体験”が、確かにこの地には息づいています。
ぜひ皆さんも、会津の扉を開いてみてください。
まずは、「いろりの宿 芦名」と「会津さざえ堂」から、旅を始めてみてはいかがでしょうか。




