大自然の中で「何もない」を感じる。隠岐郡「Entô(エントウ)」

今回の記事は島根県隠岐郡にある「Entô(エントウ)」です。「地球に、ぽつん」をコンセプトに大自然の中にあるジオパークで唯一無二な体験ができる宿。今回は「Entô(エントウ)」のある隠岐郡・海士町の魅力や宿のこだわりについて代表の青山敦士さんにお話をお伺いしました。
時間と場所、2つの軸が交差する空間

ー Entôがある海士町の魅力を教えてください。
ユネスコ世界ジオパークに選ばれている隠岐は大自然が1番の魅力です。また、自然から生まれている風土と、そこをアップデートするようなこの島の取り組みが、 時間の軸も場所の軸も入り乱れるような感覚があるところが好きです。
ー Entôは海士町の魅力を全部引き継いでいると思うのですが、どのように地域と関わっているのでしょうか。
海士町の魅力とはまさに人の交流が大きいです。
Entôはその魅力を凝縮したというよりは、フィールド(海士町)で感じてもらうことを心がけて作ってきました。どちらかというと、そのフィールドで感じた人との交わりや楽しさをEntôに持ち帰っていただき、噛みしめてもらうような空間作りをしました。
「何もない」場所でぽつんと過ごす
ー Entôのコンセプトを教えてください。
Entôは泊まれるジオパークということで、「地球に、ぽつん」という言葉を大切にしています。
大自然の中で、裸の自分、等身大の自分に立ち返ったときに様々な肩書きやしがらみを取っ払い、自分に立ち返るような場所でありたいと思っています。
ー Entôに来るお客さんはどういうところに喜ばれるのでしょうか。
「何もない」ことに魅力を感じてくださる方が多いです。
生活の中で、価値観や矛盾、欲求、情報へのアンテナなどを常に持っているのだと思います。もしかしたらここ(Entô)にヒントがあるのではないか、何かきっかけを掴めるのではないかということで来られる方が多いです。

ー Entôは入り口に入ると開けた海が望める、開放的な空間やシームレスなお部屋が特徴的です。建築上で意識されたことや工夫されたことを教えてください。
建築する上では、「補助線を引く」ということを大切にしてもらいました。
風景は島民にとって毎日見ているもので、お客様にとっても船から見えるものです。
ですが、窓枠という一つの補助線を引き、もう1本の空間軸ができるような角度を狙って設計しています。
そういった補助線を引くことで、当たり前に見ていたものが少し違った角度で見えてきます。
その補助線を空間の中にどのように差し込むかという部分を建築する上では意識していました。
ー 2021年には新館もオープンされました。新館ができた背景を教えてください。
海士町は交流や様々な教育事業、環境に対する事業、産業づくりをやってきたのですが、この交流をより良質なものへ、そしてこの土地へインパクトを与えるようなものを生み出していきたいというのを地域として目指していました。
当初はインバウンドも含め、まだこの土地を訪れたことのない方々にアプローチできるような観光資源だったり、土地の資源を作る必要性を感じ、宿泊施設を作ることになりました。
地元の人や知識とつながる場づくり

ー 地元の方との交流の場作りもされていますね。
そうですね。先ほどありのままというコンセプトもお伝えしましたが、オーネストという言葉とシームレスという建築上のコンセプトも大事にしてきました。
例えばホテルでは通常はプライベート空間を大事にするのですが、Entôではこの仕切りをいかに取っ払うかということを建築上ではこだわりました。
さらに、運営していく中でもその隔たりを無くすということを心がけています。働いているスタッフにも、ホテルのサービスマンである前に、いち島民としてここで働いてほしいということを伝えているんです。
ホテルマンの丁寧さもありつつ、話しやすさももった働き方をしたいという想いをもって来ているスタッフが多いです。何か決まったマニュアルのような接客ではなく、その人ならではの言葉やおすすめを伝えるということが重要だと思っています。
ージオパークということもあり、休息するだけでなく、様々な知識も得ることができる場となっていますね。
そうですね。この地域としては、まだ来たことの無いゲストの方に来てもらえるような宿泊施設を作りたいという希望がありました。また、大きい4つの島が共通言語として持っているのがジオパークという概念なんです。
学習していくインプットの場は既にあったので、感じたりアウトプットしたりする場としてきっかけを散らばしていくような作りになっています。

ー 昨日食べたお料理もとても美味しく印象的でした。こだわりを教えてください。
何よりも土地のものにこだわって、食材だけでなく、誰がそれをどう思っているのかということを、地域の方々と話し合いながら食材を仕入れています。
食材について知る中で、食材の適切な時期と提供方法がどんな形なのかということをチームで話し合いながら、1番適した提供方法を自分たちの言葉で届けるということを大事にしています。
引き算をしに訪れる場所
ー どのような人にEntôに来てほしいですか。
近年はWEBメディアやSNSで、部屋から見える開放感のある風景を紹介してもらっているのですが、このような風景やそこで過ごす時間を直感的に求めている方が非常に多いと感じています。
足し算というよりは少し暮らしの中や旅の中で自分で引き算したくなることもあると思います。旅の中での偶発的な体験や出会いを求めている方にぜひ訪れてほしいです。
Entô(エントウ) 基本情報

Entô
住所 島根県隠岐郡海士町福井1375‐1
連絡先 08514‐2-1000
情報は記事掲載時点のものです。施設によって営業時間の変更や休業などの可能性があります。おでかけの際には公式HP等で事前にご確認ください。