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くつろぎの空間にこだわる老舗旅館。福島市「匠のこころ 吉川屋」

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今回の記事は福島県福島市にある「匠のこころ 吉川屋」です。創業184年の老舗旅館、自家源泉の効能、館内の家具へのこだわりなどについて、7代目の畠正樹(はたまさき)さんにインタビューしました。

1000年以上の歴史を持つ飯坂温泉に対する熱い思い

ー飯坂温泉の魅力について教えてください。

飯坂温泉の魅力は非常に歴史が古いことですね。 1000年以上の歴史があると言われていて、古くから文化が交わる交通の要所として栄えてきました。

また、グルメも魅力の一つだと思います。円盤餃子とかラヂウム卵といったグルメがあったり、 サクランボや桃、ブドウ、ナシ、リンゴなどの色々な果物があります。

この土地自体に可能性が溢れているので、私たちがどう活かしていくのかというのがポイントかなと思っております。

ー飯坂温泉の可能性とは具体的にどのようなものですか?

私が子供の頃は飯坂温泉を歩くと、人と肩がぶつかる程賑わっていたんです。それが、団体旅行が減っていって、飯坂温泉に来てくれていたお客様がいなくなった時に、一気に寂れてしまったんです。

だから、今の時代にあった価値をお客様にどう提供できるのか、ということが重要だと思っています。そして、飯坂温泉に住む私たちなら、それができると思っています。

ー吉川屋さんと言えば温泉だと思うのですが、温泉の特徴について教えていただきたいです。

大浴場は福島県最大級のお風呂で、300人ぐらいの団体が入れるくらいの広さを持っています。 景色が良いのも特徴で、夏の時期は新緑、秋だと紅葉、冬になると水墨画のような雪景色がとても綺麗です。

また、泉質は地下30メートルから地下源泉を汲み上げています。弱アルカリ単純泉で美肌の湯と言って、お肌がすべすべになる保湿効果のある温泉です。 

私は生まれた頃からずっと入ってるので、とくに何のケアもしてないんですけど、肌が綺麗だねとよく言われます。

ー飯坂温泉の泉質を目当てに来る方も多いんですか?

吉川屋の目の前に公衆浴場があるのですが、皮膚病やアトピーに効くと言われていて、私の母はこの辺りに嫁いでくる前は、アトピーがあったらしいんです。でも、公衆浴場に通っているうちにアトピーが治ったんです。

他にも気分が落ち込んだ時に入ると効くとか言われてます。なので、そういう効能を求めていらっしゃる方はおられるかもしれないです。

184年間続けることができる老舗旅館吉川屋の秘訣

ー吉川屋さんの成り立ちや歴史について教えてください。

実は、コロナ禍が始まった2020年が吉川屋180周年だったんです。

なので、吉川屋は今年で創業184年、天保12年創業とされています。 この穴川温泉を開湯したのが初代の畠栄吉と言われていて、私で7代目になります。 

畠栄吉は、天保の時代に地域の伝令役を担っていたそうです。伝令役というのは、大女将の方から情報を地域に届ける命令があったときに、その情報を伝える役目をしていたという記述が残っています。

また、十綱橋(とつたばし)という100年で土木遺産になるものがあるのですが、2代目がそこの建造に関わったという記述があったり、私の父は飯坂温泉観光協会長を長く勤めていたり、私の祖父は旅行会社の役職についていたりしたので、地域や観光業界の発展に尽くしてきたのが、私どもの歴史なのかなと認識しております。

ー吉川屋さんの気持ちの良い挨拶には、まさに「まごころ」を感じるのですが、それは代々受け継がれてきたものなのですか?

特に社訓などがあるわけでは無いのですが、そのような「まごころ」は風土として、自然と文化として受け継がれてきたものなのだと思います。

代々受け継がれる吉川屋の強いこだわり

ー吉川屋さんの食事へのこだわりや魅力を教えてください。

これも吉川屋の歴史を遡るのですが、私の祖父は当時まだ珍しかった自家用車を使って、修学旅行に来た学生に美味しい刺身を食べさせてあげるために、毎日仙台の方まで魚を買いに行っていたそうです。昔から食事はすごく大事にしていたんですよね。

今の吉川屋でも創作懐石料理を提供しているのですが、季節を表現したり、目で楽しめるように作っています。そのような料理へのこだわりも、先代から受け継がれてきたのかもしれません。

ー提供されている薬膳スープは、どういう意図で作られてたりとかあるんですか。

薬膳スープは吉川の名物料理を作ろうとなって誕生したものなんです。吉川屋のコンセプトは心と体に優しい宿なので、薬膳や美肌や発酵などの健康面でも力を入れているんです。(カラダの中から美しくなる)特に女性の方から喜ばれていただいてます。

ー料理を食べる個室の空間もすごく素敵だなと思ったのですが、空間へのこだわりを教えていただきたいです。

館内には、私と妻の若女将でこだわって作ってきた施設がいくつかあります。 少し大人でおしゃれな空間にしたいということで、壁紙の雰囲気や色のチョイスは、私と若女将で作ってきました。

また、細かいところに1つこだわりがあるんです。実は椅子とテーブルの高さが標準のものより2cm低いんです。これはわざとそうしているんです。家具を探しに私と若女将で様々なモデルルームに行ったときに、なんだかすごくほっとするなと思って調べると、それらの家具が標準のものより2cm低かったんです。

それから、吉川屋の家具も真似をしようということで、椅子もテーブルもわざと2cmカットしているんです。

心まで癒される吉川屋のおもてなし精神

ー吉川屋さんの魅力やお客様に褒められるポイントを教えていただいてもよろしいですか?

自然の景色や豊かさが私どもの売りです。虫の音や川のせせらぎ、鳥のさえずりぐらいしか聞こえないほど静かなんです。それぐらい静かな場所で、絶景の露天風呂に入っていただけます。

また、スタッフのサービス、おもてなしも私たちの強みです。お客様と程よい距離感で、ゆっくりくつろいでいただけるように心がけています。そういったおもてなしの接客もあって、記念日に使っていただける方がすごく多いんです。

過去にとらわれないチャレンジ精神

ー吉川屋さんに来られるお客様はどのような方が多いですか?

吉川屋は過去に皇室の方が利用されたこともあって、高級なイメージがあるので、年配の方が多いんです。ですが、最近は若いお客様も増えています。

お客様の世代交代が必要だなと思って、コロナ禍の時に新しい施設をいくつか作ったんです。1つは4000冊の漫画ラウンジを作りました。(2次会処)この場所は絶景が見えるすごく良いスペースなのに、稼働率が低かったので、もったいないと感じて思い切って漫画ラウンジに変えてしまったんです。

他にも喫煙所だった場所をボルダリング付きのキッズルームにしました。すると、ファミリーで来られるお客様のほぼ100%がキッズルームに行かれるようになり、稼働率が上がりました。こういった遊びつくせないようなコンテンツを充実させることで、最近は若い方にも来ていただいております。

ー最後に、これから来てくださるお客様へのメッセージやアピールポイントを教えてください。

吉川屋は184年の歴史のある老舗旅館ですが、私たちは老舗は時代の流れに合わないと消えていくと思っているんです。なので、今の時代に合った新しいことにチャレンジしていきたいです。特に、最近はスマートフォンが日常的に使われるようになって沢山の情報に溢れて疲れてしまうことが多いと思うんです。旅行に行くことで、日常から離れその疲れを癒して、蘇って日常に戻っていただきたいと思っています。私たち自身もワクワクしながら、お客様をワクワクさせていきたいと考えています。

匠のこころ 吉川屋 基本情報

匠のこころ 吉川屋

住所  福島県福島市飯坂町湯野字新湯6
連絡先 024-542-2226

公式サイト
Hinotori 宿紹介メディア

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